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坂野正人

「コリン」ちゃん復活!


今年6月に「コリン」ちゃんのケガについてお知らせしましたが、今月、すっかり元気になった姿が確認されました。ギャラリーの動画映像も併せてご覧ください。

現地の石垣さんが撮影した最新映像を見ると、全身に深くついていたキズはほとんど目立たなくなり、体色がいっそう白くなりました。「コリン」ちゃんも、そろそろ大人の仲間入りです。4月末にケガを負って以来、ほぼ半年で命の危機を乗り越えた「コリン」ちゃんですが、その間、「イルカと人間の接点」について、人間側が考えなくてはならない多くの課題を示してくれました。

まずは「ウォッチング」です。

地元で、「年間を通してベルーガウォッチング」の計画が持ち上がった件は、以前触れましたが、6月にもう一件、やっかいな事件がおきました。

東京のある大手旅行代理店が「北海道の世界遺産をめぐる旅」を企画し、そのツアーの「目玉メニュー」の一つとして「能取湖に住み着いた希少動物・ベルーガに会えるウォッチング」を企画し、すでに募集もしていることが判明したのです。私は「能取湖の自然環境を見守る会」を代表して、すぐに旅行代理店の責任者に面会し、ベルーガがケガしていることを伝え、「ベルーガウォッチング」の中止を申し入れたのですが、すぐには良い返事は得られませんでした。数回の交渉の末、「ウォッチング中止」が正式に公示されたのは1か月後でした。今回はたまたま「コリン」ちゃんがケガしたことで中止していただけたわけですが、この手のツアー企画については、よほどの違法行為等が無い限り、外から干渉できるものではありません。

現在、各地で行われている「イルカウォッチング」や「ドルフィンスイム」は野生動物とのふれあいの素晴らしさを体験できる一方、そもそも野生動物を人間が勝手に商売に利用するのはいかがなものか、という倫理面の問題を指摘する声もあります。また、楽しんでいるのは人間サイドだけ、といったイルカに対するハラスメントの可能性も考えなくてはならない問題です。特に「コリン」ちゃんのような、自ら人間に近寄って来る「離れイルカ」は、ついつい人間の方が「べたべた触る」とか過度なふれあいをしてしまう傾向があり、注意が必要です。

次に「交流のありかた」です。

「コリン」ちゃんの痛々しいキズを目の当たりにして、どう対処したらよいのか、大いに悩みました。キズ口に薬を塗る、海外の野生イルカ専門家に診てもらう、栄養剤を注射する・・・。出されたアイデアはどれも、やってできないことはないものでしたが、私たちが出した結論は「能取湖の自然環境を見守る会」の趣旨そのままに「見守る」でした。人間界の考え方に沿って「良かれと思われる事」が野生動物の世界に通用するとは限りません。そこで出来ることはただ一つ。「コリン」ちゃんが持っている「自己治癒力」を、最大限発揮できる「環境」を整えることだと考えたのです。彼女をなるべくそっとしておくために私たちは、次の3点を実行しました。

・通行する船に、いっそうの注意を呼び掛けること

・マスコミの取材を自粛していただくこと

・商売か否かにかかわらず、大人数でのウォッチングは止めること

なお、以前提案されていた、巻き込まれ事故を未然に防ぐために、船のスクリューにカバーをつけるアイデアについてですが、漁師さんによると、「能取湖は海草が多く、カバーをつけるとスクリューに絡まりやすくなるため無理」との話でした。

「イルカと人間の交流」には様々なリスクが伴います。そして、そのリスクは往々にしてイルカの側にもたらされる場合が多いのです。人間は「全てを支配できる」という価値観を持ってしまいがちです。しかし、それは野生動物であるイルカには通用しません。イルカに限らず、地球上の全ての野生動物が絶滅などの危機に瀕している原因は、人間が持っている「身勝手な価値観」なのだということを今一度思い起こすべきではないでしょうか。

今年、「コリン」ちゃんをめぐって起きた様々な事件は、「イルカと人間の交流」に伴って起きてくる問題の「縮図」といえるでしょう。「コリン」ちゃんが身を挺して問いかけてくれた大切な事をしっかり受け止め、考えたいものです。

ギャラリーの動画映像は、こちらです。

2018・11・13      「能取湖の自然環境を見守る会」 


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