能取湖のベルーガ「コリンちゃん」について 重要なお知らせです。
4月末の「海明け」してすぐに、例年通り元気な姿を見せてくれたベルーガの「コリンちゃん」でしたが、また船のスクリューで、頭から背中、脇腹にかけてケガをしてしまいました。「久しぶりに遊べる」と思ったのか、夜中に仕事中の船に突進してきて船首にぶつかり、そのまま船底をつたってスクリューに接触してしまったそうです。
その後5月3日から目撃情報が途絶えて心配していたのですが、5月21日になって能取湖の漁師である石垣さんが「コリンちゃん」を確認しました。「背中などの傷も結構深いが、口先の傷がひどいようで、口を開けられない」とのことでしたので、詳細な観察が必要と判断し、5月30日に能取湖に行ってきました。
その結果、傷の間隔は一定ではなく、スクリューの大きさが違う複数の船で傷を負った可能性があるとわかりました。イルカに詳しい獣医さんに写真を見てもらったところ「傷自体はさほど心配ないが、口を開けられないとすると、捕食ができなくなり、栄養面が心配だ」との見解をいただきました。
今のところ「コリンちゃん」は痩せていません。痛々しい姿ではありますが快復しつつあります。もし食べられないままだと、体が持つだろうかと心配していましたが、6月10日になって石垣さんから「コリンちゃん」が口を開けているのを確認したと連絡がありました。まずは一安心できそうです。とは言え、しばらくの間はそっとしておく必要があります。
「コリンちゃん」を巡っては、ケガと同時期にもう一つ憂慮すべき問題が起きました。
地元の、ある漁業者の方が、年間を通して「能取湖白イルカウォッチング」をするという告知を情報紙に載せ、お客さんの募集を始めたのです。それに対して、何人かの有志の方々から「能取湖の自然環境を見守る会」宛てに「ベルーガを商売に利用するのはいかがなものか」とのご意見もいただきました。しかし、能取湖での「ウォッチング」は、地元漁協の許可や観光業に必要な諸手続きさえ踏めば可能なことで、許認可の権限を持たない私達が止められるものではありません。ただ、今後こうした計画が持ち上がった時には、「コリンちゃん」にできる限り刺激を与えないよう、その旨の「申し入れ」をするつもりです。
「野生生物を商売に・・」という考え方は、人間側の倫理観の問題といえます。現在、日本各地で行われている「イルカウォッチング」「ドルフィンスイム」はすべてこの問題を内包しています。中には、野生イルカに対するハラスメントとなりかねないことをやっている場合もあるようですが、いわゆる「動物の権利」まで思いを巡らす倫理観はなかなか期待できそうにありません。幸い、この能取湖の「ウォッチング計画」は5月に入ってから、主催者が「ベルーガがケガしている」ことなどを理由に取りやめになりました。聞くところによると、漁協の許可もおりていなかったようです。
「能取湖の自然環境を見守る会」は、「コリンちゃん」に対して「野生を尊重し、人間側からのアプローチはできるだけ避け、そのままを見守る」というスタンスを持っています。そのため「コリンちゃん」のケガにどう対処すべきか、大いに悩んでいるところですが、今、できることとして、改めて皆様にお願いしたいと思います。
船を発進させる際、船尾に「コリンちゃん」がいないかどうか、今一度ご確認ください
「コリンちゃん」を見かけた時、追い回すことはしないでください
「コリンちゃん見物」を目的に船を出さないでください
「コリンちゃん」に出会った時は、絶対に触らないでください (人間とイルカの間で感染する皮膚病があることと、人間の菌が傷を悪化させる恐れがあるため)
以上の現状を踏まえ「コリンちゃん」に対し、ケガが完治するまでの間「能取湖の自然環境を見守る会」として行っている活動については、次のように対応いたします。
年に一度行っている「船上観察会」については、2018年度は中止いたします
船を出してのマスコミ等の取材は一切お断りします
「コリンちゃん」のケガの重篤さを考慮していただき、皆様のご理解、ご協力を心からお願いいたします。
2018年6月15日 「能取湖の自然環境を見守る会」