一面の氷の世界」となった能取湖で「ベルーガ探索」をしてきました。
2月15日から21日にかけて、3回目(流氷の季節は2回目)となった冬季探索の報告です。
日程的には最初の3日間が能取湖で、後半は紋別市で開催された「北方圏シンポジウム」の取材でした。オホーツク海沿岸をあちこち走りまわり撮影してきた「流氷」の写真もあわせてごらんください。
能取漁港の石垣さんの番屋から、湖で唯一凍っていない河口付近までは「冬の船・スノーモビル」で移動。気温―10度の湖畔で、超望遠レンズ・双眼鏡・ドローンを使い探索を試みましたが、残念ながら今回も「コリンちゃん」の姿を確認することはできませんでした。
メンバーは石垣さん、東京農大の松村先生、カメラマンの中園さん、そして櫻井、坂野の5名でした。
河口付近は、外洋と湖をむすぶ水路と、湖の端100m四方くらいだけが凍っていない状態で、ちょうど真ん中にある「アイスブーム」が、流れ入ってくる「小さな氷山」のような流氷をグッと受け止めているのがよくわかります。「コリンちゃん」はこの時期、いるとすればここだけ。湖の奥は全面結氷しており呼吸する水面が無いからです。ベルーガの呼吸間隔からして、30分現れなければいないと判断できます。寒さ対策は万全、カメラの調子も問題なし・・・計3時間は水面を注視しましたが、いませんでした。
彼女はおそらく、湖が氷り始める12月から流氷がやってくる2月までのあいだに、湖に閉じ込められないよう自らどこか遠い外洋へ住処を移すと考えるのが自然でしょう。とするならばそれはいったいどの辺なのでしょうか?
外洋のオホーツク海はこの時期、ほぼ全体が隙間なく流氷に覆われてしまいます。考えられる「コリンちゃん」の行方は、比較的流氷がまばらな稚内方面か、太平洋側の根室方面、あるいは国後島方面などがあげられます。また、彼女はどうやって流氷がやってくる時期を察知するのでしょうか?・・・様々な疑問がわいてきます。
流氷が去り、湖の氷が解け始める時期の目撃情報が期待されます。そして、4月、また元気な姿を能取湖で見たいものです。
今回は「能取湖の自然環境を見守る会」の会長でもある「オホーツク流氷科学センター」所長の高橋修平先生が座長を務める「北方圏国際シンポジウム」に初めて伺いました。
このシンポジウムは、「紋別市」が主催し33回という長きにわたって開催されているもので、基本的には、ロシア・アメリカ・北欧など「北方圏」の研究者が一堂に会する学術発表の場です。
しかし、市の市民会館や文化会館、ホテルなどを会場に、多くの市民がボランティアで参加する、文字通り「紋別市」をあげて行われる一大イベントでもあり、一般向けの講座や子供たちのための講座もあり、一地方都市が主催する「文化イベント」として、その密度と内容は称賛に値するものと感じました。
私が今回伺った理由は、勿論、どんなシンポジウムなのか見てみたかったことはあるのですが、ロシアの研究者に、サハリンのベルーガ情報を聞いてみたかったのです。
「コリンちゃん」の故郷はサハリン北部に棲む「群れ」だろうと思われるのですが、彼女がどうして、どうやって能取湖までやってきたのか。これは最大の謎です。
高橋修平先生はそれについて「流氷と共にやってきた」という仮説をたてていることは以前ふれましたが、私は、流氷の南下コースである、サハリンの東側で、「コリンちゃん」と同じような例があるはずだと考えています。もしそんな例があれば、流氷とベルーガの関係がより深まり、仮設の検証にも役立つのでは・・・ということです。
シンポジウムでお会いしたサハリン在住の博士が、今後の情報提供を約束してくれました。
今年は、いろいろな新しい情報によって、「コリンちゃん」への理解が、より深まることを期待しています。
2018年2月28日 「能取湖の自然環境を見守る会」 坂野正人